ロンドンで「幻の有田焼」カフスボタンと会いました

ロンドンのアンティークショップの奥のほう。
薄暗いお店のガラスケースの中で指輪やペンダントなどごちゃごちゃに並べられた中で
ちょっと異彩を放って目立っているのがいました。

大きくて厚手でしっかりした作りのカフスボタンで
東アジア風の朗らかなご老人がモチーフ。

「重そうだけどピアスに作り替えて耳につけたい。。。」
黒の上下のときにワンポイントでつけたらいいアクセントになりそう。
シンプルな白いシャツのときも合うかも。
合いそうな服装を考えてるうちにどんどん離れがたくなり、連れて帰ってきました。

帰宅したらパソコンを立ち上げてどこの何者かリサーチ開始。
「アジア」「カフスボタン」「おじいちゃん」などのキーワードをいれて画像検索という地道な作業を繰り返すと
似たデザインのご老人のカフスボタンがebayなどで売られているのを発見!

これが、「幻の有田焼」TOSHIKANEとの出会いでした。

トシカネは1931年、有田町で磁器を制作していた小島俊一さんと絵付師の南兼蔵さんが独立して設立した会社。
社名の「俊兼」はお二人のお名前から一字ずつとっています。

第二次世界大戦の前は帯留めなどを作っていたそうです。
戦時中に帯留めは贅沢品だという時代が来ると軍人のつける徽章制作にシフト。
さらに戦後は進駐軍への納品から始まり、欧米をターゲットにボタン、ブローチやカフスボタンを作ったそうです。

西洋人好みのモチーフをとても細かい細工と絵付けで制作して、最盛期には50-60人が工房で働き
年間数万個の受注があったそうです。

グーグルでイメージ検索をすると七福神や芸者、能面のほか歌舞伎役者や菊花など
ジャポニズムなモチーフのアクセサリーたちが出てきます。
どれも色が鮮やかで形が細かい!

イギリスではコスチュームジュエリーのメーカー「ストラットンStratton」と共同制作して売り出したカフスボタンもありました。

ちなみに私の購入したおじいちゃんは七福神の寿老人か福禄寿じゃないかと。
1950年代から60年代に生産されていたようです。

多くの作品を輸出していた俊兼ですが、1985年のプラザ合意でドル安になると輸出が止まってしまい、
日本でも人々のテイストが変わると衰退してしまったそうです。

ご当地有田でも存在が忘れられてきていた、ゆえに「幻の有田焼」と呼ばれるトシカネのジュエリーたち。
海外のネットオークションでは珍しいデザインだと高額で落札されているときもあります。
日本では近年、2019年、渋谷でトシカネジュエリーの展覧会があったようですね。

知らなかった日本を一つ、学びました。

カフスボタンから作ったピアスはインスタグラムに投稿しています。

参考文献
まぼろしの有田焼 ~トシカネジュエリー~ 有田町歴史民俗資料館・館報 春2014
龍の鱗まで再現! 幻の有田焼ジュエリー「トシカネ」の展覧会・クラウドファンディング開催 Japonism 2019-07-18

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