懐古趣味から一攫千金狙いまで、イギリスのアンティーク文化

薄暗い室内と独特のにおい。客が入ってきても新聞から目を上げない店主。
店の奥まったところにある戸棚の中のカフスボタンの値段が知りたい、
けど値札が隠れていて見えない。。。
買うかまだ決まっていないのにこんな奥まったところまで店主を呼ぶべきか。。。

イギリスに来るまでアンティーク店を覗いたことはほとんど無かったのですが
多くの人がイギリスに来るとアンティークに開眼する、と聞いていた通り私も大好きになりました。

今では、アンティーク店の多い町だから行ってみよう、と、旅の主目的になるほど。

好きになったきっかけは、アンティーク店の多さと定期・不定期で開催されるアンティーク市場の多さでした。
検索すると、「アンティーク店の多い町」「おすすめのマーケット」などの特集記事がたくさん出てきます。

公共放送BBCは私が知っているだけでもアンティーク番組を3つ持っています。

2つのチームが購入したアンティークを転売して利益を競う「Bargain Hunt
日本の「開運!なんでも鑑定団」のように、相談者が持ち寄ったアンティークの価値を専門家が鑑定する「Flog It!」、「Antiques Road Trip」があり
イギリス人のアンティーク好きをうかがい知れます。
豊かな歴史と文化のある国では自然の流れなのかもしれません。

時代を経たものが好きで収集目的で集めるもいれば、一攫千金狙いや、意図せずに一攫千金になったケースも。

2008年、アマチュア収集家男性が350ポンド(約57000円)で買った絵画が実は16世紀のパルマ・イル・ジョーヴァネの作品で
25万ドルの価値があることが判明した、なんてこともありました。

タイム紙によると当時21歳だったマーク・ローレンスさんがアンティーク店に行ったときに見つけた絵画。
「きれいだな」と思って購入したそうです。
帰宅後、地元の美術館に鑑定を依頼しに持っていくと絵画はすぐにナショナルギャラリーに送られました。
そして、実はその絵は行方の分からなくなっていたルネッサンスの名画と認定されそうです。

金属探知機を使った宝探しも盛んです。
再びBBCの番組ですが、金属探知機を使って一攫千金を狙う二人を描いたコメディ「ディテクトリスト(Detectorist)」なんていうのもありました。
新聞では「ティーンエージャー、金属探知機で青銅器時代の斧を発見」「ディテクトリスト、壺に入ったローマ時代のコイン10000枚を発見した金属探知機利用者」など、ちょっと夢のある記事もしょっちゅうみかけます。

ちなみに、もし地中から何か発見したときは、国に報告することが法律で義務付けられています。
1996年財宝法(Treasure Act 1996)は、財宝の可能性があるものを発見した場合、届け出なければならないと規定して、勝手に売却できないことになっています。

ナショナルジオグラフィックによるとイギリスでは
考古学遺物の90%近くがアマチュアのトレジャーハンターによって金属探知機で発見されているそうです。

金属探知機もいつかやってみたいと思いますが、とりあえず私はマーケットと骨とう品店巡り。

無愛想な店主に戸棚の鍵を開けてもらって、手に取らせてもらっても「ありがとう!」だけ言って買わないで出ていくことも慣れてきました。(たぶんあちらはそんなことは慣れっこ)

マーケットでは顔を覚えてくれた店主と雑談しながら商品を見せてもらったり
気弱な値段交渉らしきことをしてみたり。

見たことのないデザインのカフスボタンを見つけるとわくわくします。

かつてはイギリスやらヨーロッパ大陸で誰かが身に着けていたものが今ここにあるのがなんとも不思議。
まさに一期一会のご縁、大切にしようと思います。

*この投稿、以前別のブログをしていたのですがそこから持ってきています

参考文献
St Jerome In The Wilderness: £350. Value £250,000, The Times March 22 2008
発掘した財宝は誰のもの? 英米の違い ナショナルジオグラフィック日本版 2013.03.07

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