カフスボタンを集め始めるとジュエリーの技法についてちょこちょこと聞きかじるようになりました。
今日ご紹介したいのは、高価なジュエリーに使われる技法を庶民向けの素材に使っているカフスボタン。
以前、大量生産されたカフスボタンでも、同じものを見る機会は少ない、と書いたのですが、
こちらの黒いテリアの描かれたタイプはその数少ない、わりと見かけるカフスボタンです。
つるんとした表面の中で立体的に描かれたテリア犬。
この技法、「リバース・インタリオ(逆凹版)」というそうです。
ブローチで見るカメオが凸版で彫られているのと逆に裏側を彫って形を作り出します。
19世紀にベルギーで生まれた技法で、クリスタルの平らな裏面に凹版を彫って色をつけます。
こうすることで画像が立体的に見えるようになりました。
この技法がイギリスに紹介されると人気が出て
ペンダントヘッド、ボタン、カフスボタンなどいろいろなものに使われました。
モチーフは動物や昆虫、花が多かったようです。
イギリスでは「エセックス・クリスタル」とも呼ばれている技法です。
時代がかわり、庶民もカフスボタンを着用するようになると
この「エセックス・クリスタル」をセルロイドやルーサイト(アクリル樹脂)で作るカフスボタンが出てきました。
それが冒頭のテリアのカフスボタン。
主に1930-1950年代に生産されていたようです。
他の犬や馬、乗り物など、何種類かのモチーフが流通しています。
上のほうで見ていただいた、3頭の馬の精巧さはないですが、ポップでキュートなのがこちらのセルロイドタイプ。
うちに来てくれたセルロイドタイプはいずれもピアスに生まれ変わっています。
耳につけた感じはインスタグラムに投稿しています。
参考文献
A Pair Of Reverse Intaglio Crystal Cufflinks Bentley and Skinner
REVERSE CRYSTAL INTAGLIO Antique Jewelry University
Reverse intaglio crystal brooch of three horses Hamshere Gallery