明治の超絶技巧を支えた象嵌技術

イギリスのアンティークマーケットに行くと時々出会う日本製のカフスボタン。
上の写真のものは直径1センチくらいの小さな象嵌細工のカフスボタンです。

店主から「シャクドウだよ。日本のでしょ?」と言われていたのが帰り道気になっていました。
モチーフは富士山に三重塔で日本だけど、シャクドウが何かわからず。

答えは「赤銅」でした。

銅は金、銀、亜鉛などを混ぜることで違う色を表現できるそうで、銅97%に金を3-5%、銀を1%混ぜるとできる、赤みを帯びた合金が「赤銅」だという事がわかりました。

この赤茶色の合金を溶液で煮ると発色して青紫っぽい黒に変色するそうです。
象嵌の背景の黒はこの発色処理によるものだそう。

ただし、全部の日本の象嵌がシャクドウを使っているとは限らず、産地によっては鉄や真鍮だったりも。

その後もいろんなマーケットで日本の象嵌細工を見るたび「シャクドウだよ」と説明を受るところを見ると、
英語圏では日本の象嵌細工をまとめて「シャクドウ」と呼んでいるようです。

イギリスで出会う多くの「シャクドウ」のアクセサリーは写真のようなぺったんこの「平象嵌」が多いです。
が、時々「まさに超絶技巧!」という感じの立体的なブローチなどにも出会います。
「高肉象嵌」といって、模様の部分が地金の表面より高く出っ張っていて、肉厚の模様にしているものだそうです。

象嵌の作り方は以前、スペインの象嵌の記事(こちら)で書いたのですが、基本的には固めの金属に台形の溝を彫り、溝に金や銀などの柔らかい金属をはめこむことで模様を作る技法です。
大きな溝を彫るものもあれば、京象嵌のように木綿の布目のように細い線を縦横に引いて金属箔を押し付ける「布目象嵌」という技法もあるそうです。

アンティークやビンテージに惹かれ初めて日が浅いのですが
趣味が増えると新しい世界も広がるなあ。

集めたカフスボタンからピアスを作っています。
ピアスはインスタグラムに投稿しています。

参考文献
合金の種類と特徴 松下徽章株式会社

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